今や世界経済を支配するのは情報であり、この「情報本位制」の時代にあっては、市場参加者は表面的な各国の政治・経済的な垣根を乗り越え、自分が良いと考える判断に基づいて行動します。
相場情報や相場心理がコンピューター端末を通して増幅しながら世界中に瞬時に伝わり、相場の安定を目指す世界各国の政策協調姿勢に少しでもずれや綻びが見えると、またたくまに市場はその歪みを逃すことなく突いてきます。
動揺は世界中に広がり、思わぬ事態に当局自体がさらに動揺します。
裏返して言えば、各国とも「自国さえよければ構わない」とのスタンスは許されず、好むと好まざるとにかかわらず運命共同体としての「国際協調」という一つの船に乗らなければなりません。
今回の世界的な株価急落の直接のきっかけは、西独を非難したべーカー米財務長官の発言でした。
87年2月の7力国蔵相会議(G7)のルーブル合意に基づいて、各国はドルの暴落を防ぐためにドル買い協調介入をする一方で、米国は金利を高めにし、日本や西独は低金利を維持することで米国との金利差を広げ、資本が米国に流入しやすい環境を作ることに腐心していました。
・・・ところが、夏以降のドル反発局面で、マルク安となった西独が、輸入インフレを警戒しきつめの金融調節を取り始めたのです。
米国債入札も控え、西独へのいらだちを募らせたべーカー長官の口から飛び出したのは、
「必要となれば、ルーブル合意の枠組みを一段と調整することもできる」
・・・との西独けん制。
ドル安容認とも受け取れる表現でした。