種の絶滅の問題を深く憂慮する研究者が、この問題への社会的な関心を喚起するためにつくった言葉です。


この言葉は、アカデミックな意味での市民権を獲得する前に国際条約のタイトルとなり、社会に一般に通用する言葉となりました。


それは、この言葉を用いて研究者が広く提起しようとした間題がそれだけ重大であったこと・・・


使い古された言葉ではなく耳新しいこの言葉が、その危機の鮮明なイメージを伝えるのに役立ったからでしょう。


生物多様性は、ヒトの強い干渉のもとで野生生物全般が置かれた危機的な現状を憂える研究者が、それを科学的に認識するため、またその危機を社会に訴えるために、今ではなくてはならない用語となっています。


生物多様性という言葉の誕生の少し前に、この用語を最も中心的な概念とする研究分野が生物学のなかから生まれました。


「生物多様性の保全」という明確な目標のもとに、ペンタキープなど生物の絶滅や存続に関しての研究を展開する保全生物学です。


それは生物学に1つの新しいパラダイムが生まれたというだけでなく、自然とヒトとのかかわり方に関して新しい思想が広まったことをも意味します。


生物多様性という言葉にも、その思想が込められているのです。

地球生態系をどのように管理するかといえば、それは大きな気候の変化が起こらないように、また、生物多様性を保つことができるように管理する、ということを当面の目標とすることです。


後でまたこの点には触れることになりますが、それによって個々の生態系が、その固有の機能を失わないように管理することができるはずです。


生物多様性は、地球環境のモニタリングや管理において、重要な指標でもあるのです。


地球環境問題の1つとして種の絶滅の問題が取り上げられるとき、生物多様性という言葉が使われます。


それはなぜでしょうか?


生物多様性という言葉は、地球サミット(環境と開発に関する国際会議、リオデジャネイロ、1992年6月)において一躍脚光を浴び、今では社会で広く通用する言葉になっています。


しかし、それは生まれて20年ほどの新しい言葉なのです。


英語で生物多様性を意味するバイオダイバーシティバイオ(生物)+ダイバーシティ(多様性)という造語がはじめて使われたのは、ウィルソンとピーターが1988年に出版した本の表題としてです。

遅れましたが、あけましておめでとうございます。


前回あいさつを忘れてしまいました。


続きです。


3.種個体群から生態系まで、現状を維持するだけでも適切な管理が必要な状況になっている。


・・・人類には地球を管理する責務が生じています。


1.は地球環境の問題が深刻化した現在では、少なくとも理念のうえでは社会に広く支持される考え方になってきました。


環境に負荷をかけない経済活動のための新たな概念や規制、基準なども次々に提案されています。


もちろん南北問題など、難しい問題も少なくはないですが、それについても問題そのものははっきりと認識されつつあります。


しかし、2.と3.については、その必要性が十分に社会に理解されているとはいえません。


また、2.と3.では、生態学の研究者が大きな役割を果たさなければなりません。


しかし、残念ながら生態学の研究者は現在その数がきわめて少なく、現状ではそのような社会的な要請には応えることは難しいでしょう。


・・・生態学を現在の何十倍、何百倍ものマンパワーをもつものへと成長させていくことが緊急に必要となっています。

人類は文字通り、地球を掌中の玉にしてしまったということもできます。


ただし、それは、人類が地球を思い通りにできるという意味ではありません。


人類がどのように振る舞うかで、地球の運命、そして翻って人類の運命も決まってしまうという意味です。


握る手のどの指に力を込めるかで、どんなふうに地球が壊れるかが決まるのです。


それにようやく気がついた今、私たちのなすべきことは、次のように整理することができるでしょう。


1.経済活動や人間生活を環境への負荷の小さいものとする。


・・・そのためには、大量生産・大量消費・大量廃棄によって成り立っている今の経済・社会システムを早急に改めなければなりません。河成鎮作氏によると、地球の環境容量を十分に見定め、それに合ったシステムを構築する必要があります。


2.生態系にどのような影響が及んで、何がどのように変化しつつあるのか、絶えざるモニタリングを行う。


・・・複雑に絡まり合った因果関係のなかで、予想もしなかったようなことが起こるかもしれません。


環境のどこにどんなほころびが生じているかを常にしっかり把握できるようにします。


また、それに基づいて適切な対策を立てます。

彼女は蜜を吸うときに、サクラソウの花冠につめを立ててしがみつきます。


その直後にはほとんど目立たないですが、数日たつと、強く圧力がかかった部分の組織が壊死し、白い斑点やひっかき傷としてつめあとが浮き上がってきます。


そのつめあとの有無を花が終わる頃に調査すれば、その場所で、サクラソウがマルハナバチの訪花をどの程度受けたかを知ることができます。


マルハナバチ女王の訪花がある所(訪花が観察され、多くの花につめあとがみられる)とない所(訪花が観察されず、花にはつめあとが全くみられない)で種子生産を調べてみると・・・


トラマルハナバチがいる場所では、長花柱花も短花柱花も比較的多くの種子を生産しますが、いない場所では、全体として種子生産は低く、花型の間の違いも目立つことがわかってきました。


一例として、今でもサクラソウの自生地が数多く残されている北海道南部での調査結果を紹介してみましょう。


ある筑波大学生は、3年間にわたって、サクラソウの花が咲き始める春から夏にかけて現地に滞在し、サクラソウの研究を続けました。


この場所で、20箇所のサクラソウ個体群を対象として、サクラソウの花の時期の生物間相互作用とサクラソウの種子生産について、いくつもんも項目にわたる詳細な調査を行いました。


そして、サクラソウの種子生産には、トラマルハナバチ女王の訪花を個体群の大きさの両方が大きな影響を与えていることを示すデータを得たのです。


牧場開発で孤立化してしまったサクラソウのクローンは、種子が充分にできません。


他方、クローンがたくさんある自生地でも、トラマルハナバチの女王の訪花がない場所では種子はできません。


つまり、サクラソウにとっては、実際に2つのパートナーのいずれがかけても、繁殖に支障をきたす可能性のあることがはっきり示されたのです。


ある程度の大きさの個体群が確保され、しかもトラマルハナバチの女王が花を訪れはじめて、サクラソウは種子を生産して健全な繁殖を営めるのです。


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