トラマルハナバチの女王が花を訪れると、種子がよく実るようになるのでしょうか?


この問題については、個体群問の比較で検討することにしました。


関東地方の低地、長野県、および北海道のサクラソウの自生地のいくつかで調査をするうちに、サクラソウの種子生産に違いがあることがわかってきました。


トラマルハナバチの女王がよく花を訪れているサクラソウの自生地では、どの花型の花も十分に種子を生産するのに、それがない場所では、サクラソウの花が咲いても種子は十分にできないのです。


しかし、違う地域の自生地では、環境要因がさまざまに異なるため、そこでみられた種子生産の違いが果たしてトラマルハナバチの訪花の差異を反映したものであるのかどうか・・・


はっきりした結論を出すことは難しいでしょう。


はっきりした証拠を得るためには、同じ地域の多数の自生地および個体群を比較するような調査をしなければなりません。


北海道の南部には、同じ地域に何ヵ所もサクラソウが残されている場所があって、そのような調査が可能です。


また、こうした調査では、トラマルハナバチの女王がどのくらい花を訪れているかを、自生地ごとに量的に把握することが必要です。


花が咲いている間にポリネータが訪れたかどうかを知ることは、一般にはかなり難しいでしょう。


何百・何千もの花を、開いている間、ずっと監視していることなどできないからです。


ところがありがたいことに、マルハナバチの女王はサクラソウの花びらに訪花の証拠ともいえる「つめあと」を残してくれるのです。

長花柱花の花粉と短花柱花の花粉は大きさが違うため、区別して計数することができます。

長花柱花の花粉と短花柱花の花粉はそれぞれ、口器の異なる部分にかなりの程度分離して付着していることがわかります。


これらは、京都大学のある博士が苦心してとった貴重なテータです。


このような花粉のつき分けは、異型花柱性にみられる、特殊な花の形態がどのように進化してきたのかという、ダーウィンの仮説を支持するものでもあります。


そしてこれは、ダーウィンがプリムラ・ベリスで行った実験の、サクラソウを材料とした場合の追試であり、しかも定量的な形で示された例です。


トラマルハナバチの女王の舌での花粉のつき分けは、肉眼でもある程度は観察可能です。


また、ビデオで撮ればさらに観察しやすいですよ。


長花柱花から抜いた舌では先のほうに、短花柱花から抜いた舌では元のほうに、黄色い花粉がついているのがみえるはずです。


・・・このような明瞭な花粉のつき分けは、トラマルハナバチがサクラソウの異なる花型の間での花粉のやりとりを促進するのに有効であることを示唆します。

花の形態にはクローンごとに、あるいは花ごとにも多少の変異はありますが、花筒の長さは平均すれば13ミリぐらいです。


それはトラマルハナバチ女王の舌の長さに等しいか、やや短いです。


細くて長い花筒の底に蜜がある花では、舌の短い昆虫は蜜が吸えません。


ですから、そのような昆虫は花を訪れても、せいぜい花粉を食べるぐらいです。


ちょうど舌の長さと同じぐらいの長さの細い筒状の花で昆虫が蜜を吸うとき、まるで刀がさやに納まるように、舌は花の筒にぴったりと納まります。


花粉が葯を離れて舌に付着するのはその時です。


サクラソウの花を訪れたトラマルハナバチ女王の舌では、異型花柱性に期待される「花粉のつ研き分け」が観察されます。


それは、トラマルハナバチのポリネータとしての有効性を示す最も重要な証拠です。


つき分けは、サクラソウを訪花したトラマルハナバチ女王を捕らえて、その口器の付着花粉を走査型電子顕微鏡で調べることで確認できます。

女王は最初に産んだ働きバチが餌集めや育児を担当するようになると、産卵に専念します。


働きバチが次々に生み出され、コロニーが成長していきます。


晩夏あるいは秋になると、コロニーでは、働きバチでなく、新しい女王や雄バチが生まれるのです。


雄バチは、未受精卵がそのまま艀化したものですが、新女王は、働きバチと同じ受精卵から艀化した幼虫が、餌を多く与えられることによって大きく成長したものです。


有性生殖によって次世代の生産にかかわる雄バチや新女王が生まれ始めると、そのコロニーはそろそろ終わりの時を迎えます。


雄バチは、羽化するとすぐにコロニーを離れて移動し、自分で花から餌を得ながら命をつなぎ、移動した先で新しく生まれた女王との交尾のチャンスを待つのです。


雄バチも働きバチも旧女王も死に絶え、交尾を済ませた新女王だけが、地下のねぐらを探して冬眠に入ります。


そして翌春、冬眠からめざめた女王が、新たな自分のコロニーを創設します。


一方サクラソウは、トラマルハナバチの新女王が冬眠からめざめ、巣外で盛んに訪花活動をするコロニー創設期に合わせて花を咲かせます。


トラマルハナバチの女王をサクラソウの花のパートナーと考える理由は、花の形態です。

ハチはどんな風に暮らしているのでしょうか。


ちょっと気になったので調べてみました。


1.春、女王が冬眠からさめる。


2.営巣を始め、産卵。


3.子育て。


4.蛹(さなぎ)になる頃、次の産卵。


5.最初に生まれた働きバチに餌集めをまかせ、産卵に先年。


6.数回の産卵をすませ、女王は死ぬ。


7.夏の終わりから秋にかけて新女王と雄バチ誕生。


8.新女王の交尾。雄バチは死ぬ。


9.新女王が冬眠に入る。


・・・と、こんな具合なんだそうです。


春先、女王というよりはむしろ、巣内外の仕事を一手に引き受ける働き者のお母さんというほうがふさわしい彼女たちが訪れる花は、蜜を花の奥深くに隠しています。


マルハナバチの女王は、働きバチより一回り体が大きく舌も長いためです。


もちろん女王の花は、女王たちが自ら外に出て餌集めをする春に咲かなければなりません。


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